レキのコップ


「自分に出来る事をすればよいのよ」 いきなりですがネムさん万歳(笑

レキを直接的に救ったのはラッカなんですが、思うにあのようにレキがラッカに救われ得たは、その前に周りの皆が陰ながらレキを見守り、心配し、支えてきたなんじゃないかと思います。特にネムさんが。

13話でレキがラッカに自分の内実を吐露する中で「この灰羽の信頼を得れれば私は赦されると思ったんだ」というような事を言いますよね(あれはかなり自虐的な言い方になってしまっていますが)。でもその意図どおりにレキがラッカの支えになるためには、そういう気持ちだけでは駄目で、実際にラッカに接して優しくし世話をし支えになる必要があるわけです。つまり、レキの中に「他人に優しくして支えになる」というツールが構築していなければならないし、また、レキがラッカにそのように関われる状況もオールドホームの中で確立されていなければならない。1話の「こりゃあ大変だ」なレキさんはもうそのようにする事が出来るわけで実際そうしたわけですが、それ以前のレキさんがそう出来たかというとあやしいと思うわけです。7年前にラッカが生まれてきてももちろんラッカに1話で接したようには出来ない。また5年前は「かけおちかっこいー」じゃないけど自分の事で一杯一杯でした。7年前から2年間クラモリやネムと暮らし、5年前に自警団から罰を受けた後でオールドホームに戻り、子供たちの世話をし、ヒカリが来て、カナが来て、クゥが来て、リーダー的な立場で暮らしているうちに、話師の「初めはその心性はかりそめだったがのちにその者の本質となった」のように少しづづ内面も変わっていったし、だからラッカをあのように迎えられもしたのではないかなあと思います。13話の前半でレキは「ありもしない救いを求めて7年間も」のようにグリの街に来てから今までの全てを否定するかのような事を言っていますが、そうではなくて、上に書いたようにその7年は苦しみ多いものであったけれども意味はあったのだと思います。レキ本人が嘘と言ってもそれは嘘じゃないぞ、と(笑

そこで、ラッカが来る前にレキがそのように為れていたのは、クラモリはもちろんなのですが、ネムの陰の支えが大きいのではないかと思っています。5年前にレキはオールドホームから抜け出し、廃工場に転がり込んで、あまつさえ壁を越えようとして傷つけ、自警団に罰を与えられています。レキが出ていった期間は、寮母のおばさんとネムがオールドホームを取り仕切っていたはず。レキがもう一度オールドホームに帰ったとしても、オールドホームの面々に合わせる顔はなかったのではないかと思います。しかし実際にはレキは年少組の養育係として復帰し、オールドホームの灰羽達の中でリーダーになっています。これはどういう事かと考えると、ネムが疲れ果てて帰ってきたレキのオールドホーム内での居場所を確保してあげたのではないかと考えられます。レキが居なかった一時期は、図書館の仕事があるとはいえネムが唯一の年長組なので灰羽の中では実質的なリーダーだったはず。5話でラッカが気づくように、ネムは本来すごくしっかりしている。でも、帰ってきたレキの居場所を確保する為に、ネムは一歩「引いて」、レキが自然にオールドホームの中でリーダーシップを発揮できるように色々な微調整を図ったのではないかと思います。もちろんレキに気づかれないようにあくまでさりげなく、ですが。そしてそのようにネムが引いたおかげで、レキは自分の欲求である「他人に親切にし役に立つ」という事を、クラモリから受け継いだ経験を活かして実践できるようになった。だから年少組のちびどもも自然にレキになつくし、新生児の世話も自然にレキの役割になる。こうしてレキはオールドホームの中でリーダー的役回りを自然に引き受ける事となり、たとえ一時の事ではあっても自分の罪を忘れられる事も出来るようになった。だからラッカが来た時もレキがラッカの直接的な世話係になるのもそんなに不自然ではなかったし(カナは「レキは親切すぎるんだよ」というように何か勘付いていますが。あれはカナなりのレキの内実への予感だったのではないかと思います。ネムにはもうなんとなく分かっていたような)、また他人に親切に接するツールを作れていたので、悩み苦しむラッカに対して実際の具体的な支えになる事も出来たわけです。

ネムがラッカに言った「自分に出来る事をすればよいのよ」というのは、そのような意味なのではないかと思っています。ネムは直接的にはレキの救いとはなりえないかもしれない。でも、レキがラッカに助けを求めるまでにレキを陰ながら押し上げる事は出来るかもしれない。

だから、エンディング近くで皆がゲストルームでわいわいやってる時に、ベランダに一人出て空を見上げてふっと微笑むネムさんがすごく良いと思ったり(笑 なにより、あの朝、既に起きて椅子に腰掛けて祈っているネムさんにじーんと来ました。ああ、ネムはレキの命運が今日定まるのを知ってたんだなあ、そしてレキが救われて無事に巣立つ事を、レキとラッカがレキの部屋で色々やり取りしているその最中も、起きてずっと祈っていたんだなあと。13話の表題の一つ「祈り」は、レキの祈りであると共にネムの祈りでもあったのかと思います。

そしてネムだけはなくて、カナもヒカリも、ヒョウコもミドリも、皆レキの事を見守ってきたのだと思います。そしてもちろん誰よりクラモリ。クラモリが居なければレキは、人に優しくする、人の支えになるという事を心の内に持つ事も出来なかったしそのやり方を知る事も出来なかったと思います。クゥのように言うならば、そういう皆とレキの7年間がレキの心の中のコップに少しづつ滴となって溜まっていって、その最後の一滴がラッカなのだと思います。最後の一滴はラッカじゃなきゃ駄目なんだけど、ラッカが救いたりえるためにはその前にコップが満杯近くになってなければならないわけで。そしてラッカの滴が最後にレキのコップを満たしたのだと思います。「私がレキを救う、鳥になるんだ」……やっぱりラッカは良い(笑 このようにレキのコップを皆が少しづつ満たしたのだと考えると、レキの巣立ちを皆が手を繋いで見送るシーンで「ああよかったなあ、ホントよかったなあ」と胸が熱くなったりします(笑




まだ灰羽連盟を観て間もないので、色々間違ってる可能性は大です(汗 もしかしたら間違った記憶を元に語ってたらどうしよう、という所ですが、「あくまで今のところはこんな風に思っている」という事で自分的には納得しています(笑 今回の文は、灰羽を観てあまりの衝撃に「溢れ出てくる私の気持ちを聞いてくれ!」な感じで書き殴っているので(でも実はいつもそんな感じかも?)、細かいところは気になさらないでください(汗


それにしてもレキさんは素敵すぎる……


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