レキとネムの関係の変遷


過去のオールドホームの住人を時期ごとにまとめてみました。これはアニメ本編の他にも公式サイトに書かれている情報や、原作者である安部氏の同人誌の内容を元にしていますが、私が間違えてたり勘違いしてたりする可能性もあるので、表の内容にあまり信憑性はありません(汗

9年前
ネム誕生

クラモリ、ネム
年少組
7年前
レキ誕生
 
クラモリ、ネム、レキ
年少組
5年前
クラモリ巣立つ

ネム、レキ
年少組
(注1)
レキ家出、廃工場へ

ネム、(寮母のばあさんがここで加わる?)
年少組、ばあさん

(注2)
レキとヒョウコ壁越え失敗

ネム
年少組、ばあさん
(注3)
レキ、オールドホームに帰る

レキ、ネム
年少組、ばあさん
4年前
ヒカリ誕生

レキ、ネム、ヒカリ
年少組、ばあさん
3年前
カナ誕生

レキ、ネム、ヒカリ、カナ
年少組、ばあさん
2年前
クウ誕生

レキ、ネム、ヒカリ、カナ、クウ
年少組、ばあさん
現在
ラッカ誕生

レキ、ネム、ヒカリ、カナ、クウ、ラッカ
年少組、ばあさん

(注1) クラモリが巣立ってどのくらい経ってからレキは家出したのか? 数週間?
(注2) ミドリの「ヒョウコを連れてすぐに出ていった」の言からすると、やはり数週間?
(注3) 自警団に捕まったり灰羽連盟から罰を受けたりのゴタゴタがあったので、やはり数週間は経った?
     レキがオールドホームの一員に復帰してからヒカリが生まれてくるまで、1年近くはあったと見積もっていいだろうか。

アニメではヒカリとカナのどちらが先に生まれてきたのかとか分からないのですが、公式サイトにヒカリ灰羽暦は4年、カナの灰羽暦は3年と書かれていたので、生まれた順番はヒカリ→カナにしました。

また、寮母のばあさんがいつオールドホームで働くようになったのかという事なのですが、安部氏の同人誌で、クラモリが巣立った後にネムが灰羽連盟が年少組の世話を探してくれる人を探してくれるというような事を言っているので、多分レキが家出した後にオールドホームに来たのではないかと思います。ただ、レキが再びオールドホームに帰ってきた時に既に居たのか、またはレキが帰ってきた後に来たのかは特定できないですね。3話の「お前はなりばかりでかくなって中身はちっとも変わっとらん」というばあさんの言葉を思えば、レキが帰ってくる前に既にオールドホームで働いていて、ネムと共にレキを迎えたのではないかと思うのですが…ここは結局あやふやです。ただ、今回思った事では「ある出来事が起こった時にそこに誰と誰が居たか?」を軸に考えたいので、話の都合上(笑)、寮母のばあさんはレキが家出したすぐ後にオールドホームに来て、罰を受けたレキがオールドホームに帰ってきた時には既に居たものと考えます。




ここでレキとネムの関係の変遷について考えてみたいと思います。

初めにクラモリが居た頃の二人は、母親的存在クラモリに甘える子供二人。母親クラモリと姉妹レキ&ネムという構造です。どちらかとネムが姉でレキが妹でしょうか。レキとネムの間にはいつもクラモリがいるので、喧嘩してもそんなにひどくはならない。




ところがクラモリが巣立ってしまった事で二人の関係は必然的に変わります。今まではクラモリという緩衝材がありました。でも母親的存在クラモリを失った今、二人は互いに直接向き合わなければならなくなってしまう。ただでさえ10代前半という精神的にも不安定な時期なのに、クラモリを失った悲しみが加わる。特にレキはクラモリに大きく依存していました。そんなレキがクラモリを失った今、ネムと上手く向き合う事が出来ず、レキ自身言うところの「色んなものを憎み、ネムにもひどい事をずいぶん言った気がする」のようになってしまったのも無理はないと思います。
またオールドホームで一番の年長がレキとネムになります。その頃のレキとネムは今のラッカと同じかもう少し年下くらいですね。そんな年頃の二人に年少組の世話など、オールドホームの全権が委ねられてしまう。これは結構きつい事だったのではないかと思います。ネムは図書館の仕事があるので子供の世話をするのは主にレキだったのでしょうが、当のレキは打ちひしがれていて精神的に一杯一杯。これはかなりつらい状況…。




その後ほどなくしてレキは家出してしまいます。ネムとしてはレキを心配して気づかっていたのに、当のレキは逃げ出してしまう。ネムにとってレキの家出は非常に悲しい事であり、ショックな事だったのだと思います。5話での回想シーンの泣くネム嬢とスミカは、初めて観た時は私には唐突で意味不明だったのですが(その時はネムが灰羽として生まれてきた直後で、状況に戸惑って家に帰りたいと泣いてるのかと思ったりしてました(笑))、今思うとあれはレキの家出の後の頃だったのではないかと思います。ネムもクラモリの巣立ちは悲しかったのでしょうが、一緒に過ごした時間が長かったからか、それはそれとして受け入れる事が出来たのでしょう。ちょうどクウの巣立ちに一番ショックを受けたのが一番付き合いが短いラッカだったのと同じような事だと思います。だからネムの関心は主に頼りないレキに向けられたのではないでしょうか。でもそのレキはネムを頼らずに家出してしまい、ひどいゴタゴタを起こしてしまう。「壁を越えようとして、その際一緒に居た灰羽が生死不明の重態」という報を受けた時のネムの心情はどんなだったでしょうか。

その頃はオールドホームに居たのは(おそらく寮母のばあさんが来て)、ネムと寮母のばあさんと年少組という事になります。レキがしていた(するはずだった)年少組の世話は、ネムは図書館の仕事があるので、主に寮母のばあさんがやっていたのでしょう。その頃のオールドホームが安定していたのかどうかは分かりませんが、寮母のばあさんもプロですし、それなりに落ち着いていたと考えていいと思います。




そんなオールドホームにレキが帰ってくる。レキとしては最高にバツの悪い事だったと思います。レキを迎えるネムと(多分)寮母のばあさんと年少組(年少組の巣立ちとかは謎すぎて私には分からないので割愛します(汗))。そこでレキとネムの間でどんなやり取りがなされたのか激しく知りたい所ですが、それは謎のままですね。ともあれ、レキは寮母のばあさんがやっていた年少組の世話に加わらせてもらう事になり、再びオールドホームの一員として復帰する。




しかしここで私が思うのは、この時点ではまだレキとネムの関係は、おそらく今のような関係では無いという事です。

ヒカリが生まれた事で、レキとネムの関係も、クラモリが巣立った後と同じように必然的に変化します。暦とネムは「年長組で年下の灰羽」が来た事によって、年少組に対する保母的役割とは異なり、「先輩」になってしまいます。年少組には難しい話は分かりませんが、ヒカリやカナ達はレキとネムの真面目な会話を理解して加わってきますから。

ヒカリが生まれてくる前のレキとネムは、今まであった色々なつらい事を踏まえての、もう一度の共同生活です。それはクラモリが居た頃の子供で居られた姉妹の関係とも、クラモリが巣立った後のお互いに傷つけあうしかなかった仲とも異なります。二人は気まずさ(特にレキが気まずさを感じていた?)もあるけれど、何とかまたやっていこうとしていたと思います。そしてこの頃レキの心の深層に「ネムに心配ばかりかけている」というような「ネムに対する借り」の意識が出来たのではないでしょうか。ここは想像ですが、レキがなんとか一緒にやって行きたがっているという事を感じたネムは、レキが前に言ったひどい事も家出の事も責めなかったのだと思います。レキがネムにその辺りの事についてどう言ったのかも気になりますが。

私としてはこの時期の二人をすごく見てみたいですね。一体どんな雰囲気だったのか……激しく気になるところです。いわゆる「子供が出来る前の夫婦」状態(違



そんな風に過ごしているうちに、ヒカリ達が生まれてきます。レキとネムは自動的に「年長組の先輩」に格上げされ、他の年長組の面々に対して「良き先輩」である事を要求されるようになります。このようにしてレキとネムの互いに対する関係は相対化され、互いに対する態度は、ヒカリ達と居る時と居ない時では異なるようになります。普段皆といる時には互いに繰言を言ったりからかいあっていますが、たまに出てくる二人きりの場面では、なんとなく感じが変わっています。

ここでひとつポイントなのは、「ヒカリ達はレキが罪憑きだという事を知らない」です。(実は寮母のばあさんが知っているかどうか不明なのでそこはあやふやですが)、ヒカリが生まれてくる前のオールドホームでは、レキが罪憑きである事は特に秘密のことではなかったのではないかという事です。もちろん羽根には薬を塗っていたのでしょうが特に秘密ではなかったと思います。ただ、触れてはいけないタブー的な扱いではあったと思いますが。

ヒカリが生まれた時、レキとネムは「ヒカリにレキが罪憑きである事を伝えるか?」の選択を迫られます。 レキとネムがどう考えたのかは分かりませんが、ここで二人が選んだ(もしくはレキが何も言わなかったのでネムがそれに従った)のは、「ヒカリには罪憑きの事は何も言わない」でした。

しかしレキが以前家出したり廃工場の灰羽達とゴタゴタを起こしたという事はなんだかんだと耳に入ってきます。そうすると今度は「レキの家出」関連の事件を、罪憑きの事を上手くはずしつつ部外者に上手く説明する必要が出てきます。そこで考案されたのが「駆け落ち」だったのではないでしょうか。ミドリ曰くの「笑わせないでよ!」の通り、実際には駆け落ちどころか色気も何もない決死の逃避行だったわけですが、その「駆け落ち」というのは自然発生的に皆の間で言われるようになったのか、誰かが説明した一つの形だったのか……、どちらもありうると思いますが、あえて話を面白くすると(笑)、可笑しみを交えた「荒れてて大喧嘩、あげくに家出して男と駆け落ち」という嘘(?)フォーマットを作り上げたのはネムだったのではないかと思います。……5話のネム、妙に楽しそうだったしな……。真面目に考えると、レキ自身がその事をヒカリ達に話すのはかなり苦痛の事だったと思うので、代わりにネムが上手く説明する事になり、辻褄のあうように話そうとしたら、ネムの「物語能力」が思いがけず発揮されてしまったのではないかと思います。

あるいはですが、灰羽にとっては罪憑きという事は元々タブー的な事なのかもしれません。光輪と羽根は灰羽のシンボルであり、わけも分からないままグリの街の世界に来てしまった灰羽にとっては自身の存在を示す唯一の拠り所でもあります。だから罪憑きになってしまったラッカはあれほどまでに動揺してしまう。それは罪憑きである者にとってだけではなく、他の灰羽にとってもフェータルなテーマであり、出来れば触れたくない事なのかもしれません。ヒョウコやミドリ達廃工場の灰羽も、レキの羽根が黒かった事は知っているのでしょうがそれをわざわざ知らない者に話そうとはしなかったのかもしれません。その結果、事情を知っている者が知らない者に話そうとした時、なるべく罪憑きの事に触れないようにしようとした結果、自然自然に「駆け落ち」という形になったのかしれません。
(どんなに仲違いしても、ヒョウコもミドリも、あるいはネムも、レキを罪憑きという事によって揶揄した事は一度もないですよね。それはその事がレキにとってフェータルである事を知っているから、またそれは灰羽なる者としてフェータルな事だからではないでしょうか。)

ここでヒカリ達にレキの罪憑きを隠した事にも戻りますが、思うにヒカリ達にレキの罪憑きを隠したのは、レキに対する気づかいであると共に、「ヒカリ達を無用に怖がらせないため」でもあったのかもしれません。「羽根は黒くもなりうる」というのを知っているのといないのとでは随分灰羽として生きていく自覚が違うと思います。巣立ちに関しても知っているのといないのとでは自覚が違いますが、レキとネムは「巣立ちに関しては知っておいたほうがよいが、罪憑きについてはあえて知らなくてもよし」と判断して、ヒカリ達にはそのようにあたったのでしょう。罪憑きとは違い、巣立ちはいつか必ず訪れるものなので、知らないではすまされないでしょうから。ともあれ、レキとネムは、「先輩」になると同時に、ヒカリ達に罪憑きの事を隠した事によって罪憑きと過去の出来事の秘密を共有する仲になります。




そして、この時期からレキとネムは、今の二人の関係になっていったのだと思います。いわゆる「余裕を持った最年長の年長組の先輩、互いに繰言をいう腐れ縁的関係」ですね。

これはヒカリ達が生まれた事で初めて出来た関係であって、二人が二人で居たままではたとえ今の年齢でもそうはならなかったのではないかと思います。そしてカナ、クウと生まれていき、自分達の後に来た年長組の間にもさらに先輩後輩の関係が出来るのを見た事で、さらに自分達の関係は相対化されたのだと思います。皆の真似をしてドタバタするクウの世話を焼くヒカリとカナをレキとネムは見るわけです。

また、ヒカリ達が来た事でレキが初めてリーダー的立場に押し上げられたのだと思います。元々仕事の関係もあって、ネムよりもオールドホームに居る事が多かったレキの方が自然とイニチアティブを求められる事が多かったのかもしれませんが。ここで私が思うのは、ネムがわざと一歩「引いて」、レキにリーダーをまかせたという事です。レキの「世話したがり症候群」をネムは見抜いていたと思うので。そうしてレキが中心になってまとまったオールホームに、ついにラッカが生まれてくる……。オールドホームを巡る人間関係のレキとネム中心の軸はこんな感じの流れだと思います。

そしてレキのラッカに対する入れ込み具合を知る事で、ネムはレキがラッカに何を求めているのかを悟り、そして最後の最後に、既に起きて祈っている…。「レキは無事に…?」「そう、良かった…」のネムは、レキの苦しみを最初からずっと知っていて見守っていた者としての心からの安堵だと思います。








13話で既に起きて祈っていたり、エンディングで微笑んで空を見上げるネムに激しく心打たれて以来、ネムに激しく萌えるのと共に、灰羽連盟という物語におけるネムの役回りを色々考えていたのですが、ネムは最初から最後まで居るんですよね。レキの繭を見つけ、その巣立ちをラッカに託す。話師を除けば、レキのグリの街人生の全体をずっと見守っている唯一の存在です。狂言廻しとまではいきませんが、そういうネム視点からみた灰羽連盟も面白いと思います。

初めて灰羽連盟を観た時、「これはラッカの物語であると共にレキの物語だったのか!」と感動しました。そしてそれは「そんなレキをずっと見守っていたネムの物語」でもあったわけですね。またネムの他にもヒカリやカナやクウたちの視点から見たそれぞれの物語もあるわけで、そういうのを思うと、つくづく灰羽連盟は奥が深い構成になっているなあと思います。

クウが巣立ったかもと聞いた時のカナの「私は絶対信じないからな!」でぐっと来たのですが、カナは普段クウをからかってても一番気にかけててたんだろうなあと思うと、カナ視点の物語とかも見てみたいですね。

また、7話でラッカを泣かせたイケズな灰羽ヒョウコ。ラッカに駆け去られて一人立ち尽くすヒョウコの心情、

やっちまったあああぁぁぁ!!!
仲間が巣立ってしまってショックを受けていたレキの事を知っているのに、
俺って奴は、俺って奴はああああああ!!!!!!


を思うとヒョウコ視点の話とか(笑


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