『アルテナとクロエと黒キリカをしあわせにしてあげ隊』




突然ですが、私は「アルテナとクロエと黒キリカをしあわせにしてあげ隊」に所属しています。
略して「アルクロ黒をしあわせにしてあげ隊」……略になってませんね。



アルテナも、クロエも、黒キリカも、それぞれ苦しんでいました。
苦しみの生を送ってきました。それぞれの形は違えど、アルテナたちはつらく、苦しく、孤独でした。



アルテナは、クロエと一緒に暮らしていても、どんなに体を触れ合ってみても、どうしても心を開き切れないものがありました。
凄絶な過去、身の内にある憎しみ。絶望。アルテナをグラン・ルトゥールに駆り立てていたすべてのもの。
アルテナにはそうするより他になかったのです。
そしてクロエたちに自分のすべてをゆだね、受け入れられ、赦されること、アルテナにはどうしてもそうする事ができませんでした。
クロエに「あなたに愛されて、わたしはしあわせです」と打ち明けられた時、嬉しさの後に悲しみと憂いが湧いてきてしまうほどでした。
この子たちが自分に向ける素直な愛情、自分はそれを享受する資格がない。
アルテナはクロエとグラン・ルトゥールを秤にかけてどちらかを明確に選び、どちらかを思い切ることさえ出来ませんでした。
アルテナは混沌とした心のままに歩んできました。
そして本編でクロエを失ったとき、救いのない絶望だけが残りました。
もしアルテナがクロエたちに愛されることを心からよしとすることができていたら何かが変わったでしょうか?
そのようなことは不可能だったでしょうか?
きざしはありました。
クロエや黒キリカに自分の名を不意に呼ばれてはっと振り返るアルテナは、確かに驚いていました。
それはしあわせな驚きでした。自分が本当に愛されるとは思っていなかったアルテナのしあわせな驚きでした。

その続きを見たい。
クロエたちに本当の自分を受け入れてもらい、赦され、
どうしようもない深い絶望に生きてきたその苦しみを癒され、喜びのしあわせに飲まれて泣きじゃくるアルテナを見たい。
クロエたちと本当の意味での家族になれたアルテナを見たい。
クロエたちに愛される事を心から受け入れることができるようになったアルテナを見たい。



クロエは、アルテナに愛されて育ちました。そしてアルテナを愛しました。その点ではクロエはとてもしあわせでした。
でもアルテナの尖兵としてつとめを果たすのは、過酷な心理的負担を生みました。クロエ自身はそうだと自覚できませんでしたが。
そしてノワールの事は常に不安でした。夕叢霧香がかつての黒キリカに戻り、そして自分を受け入れ、好きになってくれ、
ノワールとして共に生きていってくれるかどうかについては、不安でしかたありませんでした。
記憶を失った別人格の白霧香はパリでミレイユと暮らし、二人の絆は日に日に強まっていき、クロエの不安は増大しました。
でも荘園に帰ってきた黒キリカはクロエを認めてくれました。
本当に微妙でかすなか描写ではありますが、確かに黒キリカはクロエを受け入れかけ、好きになり始めていました。

クロエはアルテナを愛し、アルテナに愛されながらも、アルテナを完全には理解してはいませんでした。
それはアルテナがクロエに対し常に構えていたからですが… クロエはそれと気づかないまでにも漠然としたさみしさを感じていました。
黒キリカとはやっとスタートラインにたったばかりでした。
黒キリカとこれからどのように共に生きていくのかは、まだわかりませんでした。

その続きを見たい。
本当のアルテナを受け入れたクロエを見たい。アルテナと本当の姉妹に、母娘になったところを見たい。
アルテナと本当に心を通じ合わせれるようになったクロエを見たい。
黒キリカと一緒にずっと憧れていたノワールになって、アルテナの元でつとめを果たしていくしあわせ一杯のクロエを見たい。
黒キリカとゆっくりと健やかに、静かに深い愛を育てていくところを見たい。たまには喧嘩もしてほしい。



黒キリカは、幼い時にアルテナに銃を渡されてコルシカでつとめを果たして以来、人殺しの罪の意識に苛まされていました。
「私は罪びとです。罪を犯して生きてきた。家族なんて」 黒キリカがたった一人でずっと抱えてきた苦悩。
世界に自分の居場所はどこにもない。自分はこれまでもこれからも人殺しの罪びとであり、どうにも変えられない。
その孤独が黒キリカを険に満ちた厳しく暗い目つきにさせていきました。

でも荘園に還ってきて、アルテナとクロエに暖かく迎えられ、戸惑いながらも少しずつアルテナたちを受け入れていきました。
自分の世話をしてくれるアルテナを思わず呼び止めてしまいました。
人殺しをしたその自分、ずっと嫌悪してきたその自分にずっと憧れてきたのだ、という、他の誰にも決して言われえぬであろう、
ありのままの自分を受け入れてくれるクロエの言葉を聞きました。
「わたしはなんでもできる、あなたと、アルテナののためならば」という、今まで誰にも言われなかった言葉を聞きました。
でも黒キリカは自分を否定する気持ちがずっと今まで強かったために、素直にクロエの想いを受け入れる事はその場ではできませんでした。
むしろ、「どうしてこの人たちはわたしをそんな風に想ってくれるのだろう。こんなわたしに」という、悲しい気持ちになりました。

その続きが見たい。
孤独を癒され、世界で唯一の安住の地で心地よさを受け入れる黒キリカを見たい。
アルテナとクロエに、開きつつあった心を完全に開き、暖かく遇されることを受け入れ、
自分からもアルテナとクロエに優しくする黒キリカを見たい。
そしてクロエに自分の想いをちゃんと伝え、素直に互いに愛しあうことができる黒キリカが見たい。それでもってやっぱりたまには喧嘩もしてほしい。



アルテナは、クロエと黒キリカがふしあわせであったら決してしあわせにはなれません。
クロエも、アルテナと黒キリカが苦しんでいたら自分もつらくなってしまいます。しあわせにはなれません。
黒キリカも、アルテナとクロエが悲しんでいたら自分も悲しくなってしまいます。やっぱりしあわせにはなれません。

誰か一人でもふしあわせであったら決して他の二人はしあわせにはなれないでしょう。
また他の二人がふしあわせであったら、残った一人は絶対にしあわせにはなれません。
アルテナとクロエと黒キリカは互いにしあわせであって初めて自分もしあわせになれます。
三人は、三人一緒で同時であって初めて本当にしあわせになれます。

そして三人一緒にしあわせになってほしい。

もし涙する事があるのならそれは嬉しさのあまりの事であってほしい。

互いの持つ苦しみも、悲しみも、つらさも、さみしさも、消えることはないかもしれないけれど、
それでも一緒に生きて、
苦しいのなら共に傷をなめあい、悲しいのなら共に慰めあい、つらいのなら共に打ち明けあい、さみしいのなら共に寄り添い、
慰めあい、支えあい、笑いあい、時には恥をかきあい、時には喧嘩もし、
そして喜びがあるなら喜びを、嬉しさがあるなら嬉しさを分かちあえる本当の家族になってしあわせに暮らしていってほしい。



心からそう思っています。
もちろんボルヌとマレンヌとシスターさんたちにもしあわせになってほしいです(笑

このような願いによって、アルテナたちが最終回以降に生きて荘園で静かにしあわせに暮らしていく物語を紡いでいくこのサイトを作りました。
そして私も、アルテナたちのしあわせを願う多くの人たちの中の一人にすぎません。
このサイトの設立よりもずっとずっと前から、
このような願いのもとにさまざまな場所でアルテナたちへの想いを書き連ね、またアルテナたちの色々なしあわせの情景を描いてくれた
すべての方々に、感謝と祈りを捧げます。


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