『写真』



アルテナは厳しいけれど優しい。
アルテナはいつもわたしたちを暖かく見守ってくれている。
アルテナは大人だ。
クロエはふと疑問に思った。
若い頃のアルテナってどんなだったのだろう。
でもアルテナからアルテナの昔の話を聞いた事はない。
クロエはボルヌに聞いてみた。
しばらく沈黙したあと、ボルヌは答えた。
「アルテナが話したがらない事なら、あなたは知らなくてもいいのですよ」
クロエは少し考えてから納得した。

ある日の午後、
クロエはキリカと一緒に薄暗い書庫で調べ物をしていた。
埃だらけの本棚の分厚い本と本の間に、
赤い、まだ見た事の無い小冊子があるのが目に付いた。
おや、こんな本、こんなところにあったろうか?
クロエは幼い頃から幾度となく書庫に入り浸って遊んでいたので、
たとえまだ読んでいなくても本の並びは知り尽くしていた。
クロエはその奇妙な小冊子を本棚から引き抜いた。
クロエはキリカを呼び、二人は緊張しながらその赤い冊子を開いた。
しかしその冊子には何も書かれていなかった。
そのかわり、冊子を開いた拍子に何か小さな紙がこぼれて床に落ちた。
キリカはすばやくその紙を拾った。
その紙は古びて擦れていたが、どうも写真のようだった。
二人は顔をつき合せてその写真をのぞきこんだ。



写真



クロエはしばらく時を忘れてその写真に見入った。
これがアルテナ?
左に写っているのはボルヌのようだ。
真ん中はマレンヌだろうか。
右に居るのは…アルテナ。
面影からするとアルテナのようだ。
クロエにもこの顔立ちのアルテナの記憶はおぼろげにある。
ずっと昔、クロエがほんの子供だった頃のアルテナだ。
そう、キリカと共にコルシカのつとめに行った頃のアルテナ。
この蝶スカーフと、今とは違うデザインの白いローブは覚えている。

いや、あの頃よりもさらに少し若いだろうか?

でもそれにしてもこれは…?
クロエは不思議な気持ちになった。

ふと気がついて、キリカは写真をめっくて裏を見てみた。
そこにはかすれかかったインクで走り書きがあった。

我が不肖の愛しい教え子たち



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