夜、書斎でろうそくの灯りの照らす中、 キリカは一人でソルダの原本を読んでいた。 後ろの戸口に気配を感じ、思わず緊張する。 トン、トン、トン、タン。 肩にそっと手が置かれる。 隣の席にアルテナが座った。 キリカ「……?」 アルテナ「いいのですよ、 気にしないで続きを読んでください」 キリカ「……」 キリカは本を読み続ける。 ふと、頭にアルテナの手が優しくかかるのを感じる。 キリカ「……?」 アルテナ「少し…頭をなでさせてもらえますか?」 キリカ「……」 なでなで。 アルテナは微笑みながらキリカの頭をなでる。 こそばゆさを感じながらも、キリカは本を読み続ける。 ソルダの両手は二人の乙女 なでなで。 罪を背負いつ 慈愛もて 差し伸べられる漆黒の手 なでなで。 …ノワール なでなでなでなで。 キリカ「あの…」 アルテナ「はい?」 キリカ「そろそろ…」 アルテナ「ん… もう少しだけ… だめでしょうか?」 キリカ「いえ… …… ……だめではないです」 なでなでなでなで なでなでなでなでなでなでなでなで なでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなで 戸口の影にボルヌとマレンヌが 息を潜めて立っている。 マレンヌ(ボルヌ、あなたから入ってください) ボルヌ(あなたこそ… い、いまは…) 二人とも分かっている事は唯一つ、今はこの部屋には入れないという事だった。 |
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