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『嘆きの子らを護り 戦う』




……クロエとキリカは、うち沈むアルテナに手を差し述べる。

「アルテナ。さあ、一緒に行きましょう。私たちとまた一緒に暮らしましょう」

アルテナは驚いた表情を浮かべるが、やがてうつむく。

「私は……罪びとです。
 私はあなたたちと共に暮らす資格はありません。
 私はあなたたちを偽りました。
 あなたたちが死ぬかもしれないのにあえてその芽を放置しました。
 それに私はあなたたちが思ってくれているような優しい人間ではありません。
 私はあなたたちに愛されるような人間ではありません」

クロエとキリカは互いに顔を見合わせる。
キリカは叫ぶ。

「それが……どうだっていうの?」
「えっ?」

クロエが言葉を紡ぐ。

「私たちはあなたを愛しています。
 私たちがあなたを愛しているのです。
 私たちはいつでもあなたのそばにいます。
 あなたがどんな人でも私たちだけはあなたのそばにいます。
 だから、アルテナ……」

二人は再び手を差し伸べる。

「アルテナ……さあ……」




……二人に包まれてアルテナは想う。



私はずっと死を願ってきました。
私にとって生は忌まわしいものでしかありませんでした。
どれだけ死を司っても、どれだけ罪の中の罪を背負っても、
私は決して救われませんでした。

でも今はあなたたちがいてくれます。
あなたたちが私を求めてくれています。

あれだけ憎んでいた、あれだけ消し去りたいと思っていた私の存在は、
いつのまにか、かけがえのないものに変わっていたのですね……

クロエ、キリカ。
あなたたちに名を呼ばれたい。
あなたたちに笑いかけてもらいたい。
あなたたちに求められたい。
いつでも呼んで、私の名を。「アルテナ!」と。
そしたら私は必ず応える。
私はあなたたちのものです。

ごめんなさい。
あなたたちを愛してしまってごめんなさい。
でも……私を愛してくれてありがとう。
そして……あなたたちを愛する事を赦してくれてありがとう。

……ありがとう。



アルテナは顔を上げて二人を見る。

「私は……あなたたちに愛されて、幸せです」



愛で人を殺せるのなら、憎しみで人を救えもするだろう。

世界は業苦に満ちている。


だがノワールは闇にありて、嘆きの子らを護り……戦う。











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『嘆きの子らを護り 戦う』

愛で人を殺せるなら、憎しみで人を救えもするだろう。
アルテナがそう信じるのなら、私もそう信じます。
そしてノワールを渇望したアルテナもまた嘆きの子なのだと思います。
そのアルテナを護れるのはクロエとキリカしかいない。
三人が本当に幸せになる事を心から願っています。


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