『マントとローブと』 しんとした荘園の夜。 クロエは自室に帰ろうと廊下を歩いていたが、 書斎から灯りが漏れているのに気づいて寄ってみる。 するとそこには蝋燭の灯りに照らされたアルテナの後ろ姿があった。 「アルテナ、……アルテナ?」 近づいてよく見ると、アルテナは開いた本の上にかぶさり、眠り込んでいる。 (アルテナ、疲れているのでしょうか……?) かすかな寝息を立てて寝ているアルテナを無理に起こすのも可哀想だと思ったクロエ。 (でもこんなところで寝ては風邪をひいてしまいます) 着ている濃紺のマントを脱ぎ、ふわりとアルテナの肩に羽織らせる。 「おやすみなさい」 小声でそうつぶやき、クロエは身をかがめてアルテナの頭にそっと唇を押し付ける。 クロエは身を起こし、足音を立てないようにそっと部屋を辞した。 窓から差し込むやわらかい陽射しを受け、アルテナは目覚めた。 (どうやら本を読んでいるうちに眠ってしまったようですね) 頬に押し付けられている本のページをぺりっとはがし、身をおこす。 そこで肩にかけられたマントに気づき、ちょっと驚くアルテナ。 (クロエ……なのでしょうか?) 身をつつむ白と紫の司祭服にかけられた濃紺のマント。 そのアンバランスな彩りにアルテナは微笑む。 (クロエ……) 顔をかしげ、肩口から垂れるマントにそっとくちづけをするアルテナ。 荘園に穏やかな朝が来る。 |